以前、この小説のいち場面を描いたファンアートイラストを観て気になり、昨日書店で購入させて頂いた。
この小説は初代『ウルトラマン』後の世界を描いたものだ。舞台は、話中にも登場する棲星怪獣ジャミラの生没年から推測された20世紀後半。ウルトラマンが去った後、怪獣を相手に戦ったその実力を見た世界各国は、怪獣災害対策と銘打って軍拡競争を始めていた。その渦中にムラマツキャップ(この小説では漢字表記の「村松」と呼ばれている)をリーダーとする科学特捜隊のメンバー達が巻き込まれていく。
いちばん思い悩むことになったのは井手隊員だろう。彼は『ウルトラマン』のジャミラ登場時にも、人類の科学のありかた、科学者、人間の心のありかたについて考えさせられている。井手隊員は、この小説では主人公として世界各国の軍拡競争の有り様を目撃し、また参加する立場となり、『ウルトラマン』で観せたムードメーカー的な面はほぼ無くなっていると言って良いだろう。しかし科学を愛し、人間と文明の関係について真剣に考える姿勢を持つ井手隊員は、今回の主人公として適役だったと言える。
勿論、『ウルトラマン』にて主役を張った早田隊員もまた、思い悩む者のひとりだ。長らく変身者という役割でウルトラマンと命を共にして来たが、ウルトラマンが地球を去って以降は活動時の記憶を失くしており、曖昧な自分の立ち位置に決着を就けることを強く望んでいた。
そんな中、富士隊員が『ウルトラマン』話中でメフィラス星人によって巨大化されられた後遺症により、巨人兵士として怪獣との戦いに身を投じていく。
この富士隊員の活躍はこの小説に光を与えてくれている。彼女の存在は話中で繰り広げられている軍拡競争に投げ込まれた波を立てる小石であり、闇の中で輝く光であり、爽快感を与える道標となっていると思う。富士隊員というイレギュラー要素が、怪獣との戦いで活路を開く鍵となり、軍拡競争を終わらせていくのだ。
また、富士隊員を始め科学特捜隊の敵となって登場するのは、『ウルトラマン』の怪獣や異星人だけではない。四次元怪獣ブルトンが悪用されたことにより、他のウルトラシリーズに登場する怪獣達も続々登場する。
中でも登場が嬉しかったのは、映画『ULTRAMAN』からビースト・ザ・ワン、『ウルトラマンネクサス』からダークザギ、ダークファウスト、ダークメフィスト達だ。ビースト・ザ・ワンが登場するとは夢にも思わなかったし、登場怪獣の一番手を飾るのも嬉しい。また、『ウルトラマンネクサス』劇中では同時に登場することが無かった闇の巨人達が一緒に登場し、共同戦線を組むのが読めて楽しかった。それに、本編中では互いに利用し利用されるのが当然だった闇の巨人達が一緒に戦うのは新鮮でもあった。
正直言って、話の進み方が急ではないかと思われる点も無かった訳ではない。登場人物達の悩みに対する答えの提示のされ方は、若干無理矢理感は否めない。けれども著者自身も話数の制限がある中で、構成に苦労されたそうだし、何よりこれはウルトラマンの物語だ。不可能を可能に変えていくのがウルトラマンなので、これはこれでアリなのかも知れない。
読んでいてとても楽しかった。息を着かせないワクワクドキドキの展開にページを捲る手が止まらず、1日も経たないうちに読み切ってしまった。大変面白かった。